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あんしん子育て’サポートプロジェクト第5回学習会(12月8日) 「パパの体験~産後うつの妻を支える~」開催報告

掲載日:2013年12月15日 こころがブルーなママたち, イベント・セミナー, スタッフブログ, レポート

12月8日(日)、’あんしん子育て’サポートプロジェクト第5回学習会を武蔵浦和コミュニティセンター(さいたま市南区)で開催しました。
第5回テーマは、「パパの体験 ~産後うつの妻を支える~」。
第2回学習会では、さいたま市の自助グループ「はぐはぐ」代表で臨床心理士の藤枝真紀子さんの体験をお聞きしました。第5回の講師は、第2回学習会講師藤枝真紀子さんの夫です。妻真紀子さんと対談形式で、真紀子さんが第一子出産を機に産後うつを患った際をふり返っていただきました。
大和証券福祉財団「平成24年度(第19回)ボランティア活動助成」採用プロジェクト
後援:さいたま市
≪講師プロフィール≫
藤枝静暁さん
自助グループ「はぐはぐ」主宰・藤枝真紀子さんの夫
藤枝真紀子さんはぐはぐ(ママブルー埼玉)代表
臨床心理士、ガイダンスカウンセラー、学校心理士、認定心理士
「はぐはぐの場」は2010年1月から始まり、今年で4年目を迎えました。
産後ブルーの全国ネット「ママブルー」の埼玉支部でもあります。

≪第1部:夫の体験~産後うつの妻を支える~≫
≪夫の話≫
闘病のはじまり
 妻は長男を里帰り出産したが、どんよりして、話もできない状態でどんどん調子が悪くなっていった。いよいよ病院に行かなくては…と、初めて精神科を受診したが、患者が溢れ、待ち時間も長く、薬を出すだけの病院に驚きと不信を感じた。
信頼できるかかりつけ医に相談し、別の病院を紹介してもらった。次の医師は薬の効果を聞きとりながら、細かな調整をしてくれた。医師はもちろんだが、受付の人の対応も含めて、信頼できる人たちだった。治療費の手続きも進めてくれ、負担が減ったのも有難かった。

周囲の人のサポートは、難しい。
 親族は初孫を見たいというが、妻の体調はすぐれず、すぐに連れていくこともできなかった。親族は、「~したら」とあれこれとアドバイスをくれる。ある時、親族の手配で、複数の宅配がサンプル品を持って訪問に押し寄せ、困り果てた。周りはよかれと思って、やってくれるのだが、周りのサポートのあり方は難しい。

仕事に出かけている間の不安
 ある日、妻は、自分にも子供にも申し訳ないからと離婚を切り出した。そんなことを言われてもできるわけがない。とにかく必死の状態だった。
朝、家を出ていくことは怖かった。自分が家にいない間、無事にいてくれるかな、生きているかなと…。
うつ病はいつ治るからわからない。この生活がどうなっていくんだろうという見通しの立たないことへの不安が続いた。

≪妻の話≫
 話を聞いて、あらためて「そういう風に思っていたのか」と思う。夫がいろいろと話しかけてくれていたことは、全然覚えていないので申し訳なかった。当時は自分のことで精一杯だった。自分が思っていた以上に負担をかけていたと思う。

≪夫の話≫
回復への道
 パートナーだから、負担というよりも、一所懸命できることをした。
ほんの少しずつ回復に向かっていった。タクシーでの通院が、途中まで電車に乗れるようになったり、会話も増えていく。しかし、今日は晴れていたかと思うと、ある日はどしゃぶり。また、このまま元に戻ったらどうしようと、安心ではなかった。

 仕事から帰宅した後、子どもと夜の公園で30分位遊んだ。妻も、短い時間でも子どもと離れ、一人の時間があった方が良いのではないかと思った。
ある時、年末の大掃除を何時間も頑張って、その後、実家に里帰りできる程活動的になった。ところが、その後起き上がれることもできないという状態になってしまう。しかし、エネルギーをチャージする時間が短くなったのか、不調がずっと続くという状態ではなくなっていった。

 ところが、主治医が体調不調のために、受診が続けられなくなってしまった。次の医師はモンスタードクターだった。頼るところがなくなると心配したが、妻が「あんなお医者さんだったら、私いかないよ」と冷静に対処したことに安堵した。

 妻は、電話相談も利用していた。毎週、継続的にサポートしてもらった。
うつ病に大切なものは、「休息、受診、カウンセリング」と言われるが、その通りだと思う。
ようやく回復期を迎え、服薬を終了することになった。断薬して1ヶ月程、不眠が続いた。断薬による症状のひとつだった。
生活全般が少しずつ、元に戻ってくるまでに3、4年かかった。

≪妻の話≫
 今ならば、いろんな人に支えられて今があることがわかるが、体調には波があり、当時は自分のことで精一杯だった。その体験があるので、同じような状態の人を見て、「今は、余裕がないんだな」ということがわかるようになった。

≪夫の話≫
社会復帰への道
 マイナスをゼロに戻していくという状態だった。
二人目の妊娠がわかると共に、私の職場が変わることを機に埼玉県に転居をした。
出産に備え、長男の保育園入園の手続きをしたが、第4希望の保育園にしか入れなかった。入園は3ヶ月の予定だったが、役所の支援もあり継続でき、6ヶ月通った。長男にとっては、初めての集団生活。朝は大泣き。駅のホームでも子どもの泣き声が消えなかった。しかし、夕方迎えに行くと、「もっと遊びたい」と言う。子どもの力はすごい。それを支えてくれた、保育士さんには頭が上がらなかった。

 その後、幼稚園に通園を始めた。迎えのバスの時間も決められている幼稚園生活をやっていけるだろうかと妻は心配していたか、すごくよくやってくれたし、ママ友もできた。幼稚園には、2年間お世話になった。
 長男の小学校入学時に、妻も仕事を再開することにした。長男の学童保育と次男の保育所探しは大変だった。何度も役所に通った。3ヶ月後に希望のところに入ることができた。就職活動も大変だったが、「ぜひ来てほしい」という職場に繋がることが出来た。
3.11の東日本大震災の時、妻が帰宅したのは深夜3時だった。その体験から、現在は、職場から歩いても1時間半位で学校や自宅に帰れるような環境づくりをしている。

 妻が自助グループ「はぐはぐ」を主宰して5年になる。自分の体験が産後うつ等の母親の支援になればと、埼玉県に転居してすぐに、役所に出かけたり、すごく頑張っていた。震災時に一度休んだ以外は、毎月開催を続けている。また、「はぐはぐ」の活動報告は、大学院紀要に掲載された。本当にすごいなと思う。仕事や社会貢献活動を続け、今はかなり安定している。

≪妻の話≫
 当時は、夫がそんなにいろいろなことを考えているということは思わなかった。
闘病している家族を支えている立場の人への支援がないのではないかと思う。
自助グループ「はぐはぐ」は、社会貢献というより自分のためにやっている。
自分がこういう経験をしたことの意味付けをしたいと思ってやっている。
人はいろんな人に支えられて生きているんだなと改めて思う。

≪第2部:妻の産後うつ体験から思うこと≫
 ここまで夫婦二人で何とかやってきたが、私なりに気付いたことを8点にまとめてみた。

1.うつ病の治療・回復に必要なことが知られていない。
 うつ病の人の’実際’の様子は傍にいて見た人でないとわからない。うつ病の治療・回復に必要なことが知られていない。100人いれば100通りの回復があると思う。

2.医療が出来ること
 医療は骨折や風邪等は治せるが、メンタルの治療は難しい。患者の家族や生活までは見えない。

3. 見通しが立たない不安
 昼間、妻が独りでいることは怖い。仕事をやめてそばに居た方が良いのか迷う時もあった。回復の見通しが立たないことは、大きな悩みだった。「調子が悪い時のライフイベントに関わる大きな決断は控えろ」と言われている通り、やめなくて良かったと思う。

4.専門職の社会的役割
 医者、保健師等、専門職の当たりはずれは大きい。具合が悪い人が頼っていく専門職としての社会的役割を担える人に出会えるかどうか。良い人に当たると回復の道に繋がりやすい。ダメだと思う人に頼ることはないと思う。

5.回復には時間が必要
 絶対的に治療には時間が必要。無理は禁物。

6.速効性のある社会資源がない
 ファミリーサポート、トワイライトサポート、病児保育等の社会資源もいろいろあるが、どれも事前手続きが大変。無いよりましだが、本当に具合の悪い時には手続きひとつ負担が大きいものである。「今必要なんだよ」という時に、速効性のある支援はないというのが実感である。

 7.周りのサポート
 周囲にサポートしてくれる人がいるかは大きい。妻が電話相談を利用したように、自己開示できる場があるかどうかは回復のコツだと思う。

8.回復への信念
 妻は本当に辛かったが、本当に治そうとしたから治ったのだと思う。生きる主体は本人なので、本当に回復したいという信念は大切だと思う。
 あの辛い状態からここまできてくれて…。これからもよろしく。

≪妻の話≫
 私が起き上がることもできず辛い時期、夫は家事をしてくれていた。闘病中の家庭への「家事サポート」は、必要だったと思う。また、必要なサポートの利用手続きを仲介してくれる支援も必要。支援は本当に足りない。
私は、回復するまでに3年かかった。私の場合は生き方をかえなければならなかった。
回復が長びいている人がいても、その人は戦っている人。現状維持ができていることもすごいことだ。
生き方を変えることを頑張っているということをわかってもらえればと思う。

≪参加者の皆様からのメッセージ(アンケートの感想から)≫
おいそがしい中、有難うございました。言葉にならないです。感無量です。
サポートする側からのお話を聞かせていただき、ためになりました。受け止めるだけでなく、一緒に出かけたり、どうしたい?って聞いたりしていくこともしていいんだなと知れたので、今後パートナーとの関わりの参考にしたいです。今回ともすべてに参加して、本やインターネットだけでは知れない話が聞けて、ひとつひとつの会を通しながら、私の財産になりました。来年の開催も楽しみです。
藤枝さん、ご主人様。本当に良くできたご主人だと思います。でも、そみまでさせたのは、奥様がそれだけの存在だから・・・。病から立ち直る理想の形の様に思いました。で、今だから結果良かったと言えますが、その数年間は、本当に地獄だったと思います。そして、誰もがこういう風になる訳ではありません。こうしたお話を多くの人に知ってもらう事、うつ病について、もっと知ってもらうことは大切だと思いました。
貴重なお話、情報有難うございました。大変大切な活動、どうぞ長く続けてください。また、チャンスを見つけて、何か参加させていただきたいと思います。思っていたより、話題が広かったです。
産後うつを経験した家族の生の想いをきけてよかったです。そして、他の参加者の方とのきょう夕刊をもてたことも良かったです。今後も、こういう交友関係をもったらよいのに…と思いました。
産後うつの夫して立場からの想いや考えを知ることができた。支えとなる立場(配偶者、パートナー)への支援についても知るきっかけになり、参加させていただき本当に良かったです。また、このような集まりに参加させていただけたら嬉しいです。
今回出席させていただいて、まさに知り立ったこと、「うつを治す」という本は眼にしましたが、経験談と、そして、周りはどうしたらいいかというこし、医師に聞くことでもんいし、どこに聞いていいかわからないということをお聞き出来、言葉に表せないくらい感謝の気持ちです。本当に有難うございました。
今日は、藤枝ご夫妻の深い愛をひしひしと感じました。妻である私としては、こんなにも大切にしてくださるご主人をすばらしいなと思うばかりです。今日も多くの気付きがありました。ありがとうございました。
本日は、大変貴重な体験談をきかせていただきました。これまで学んできたのは、一般のうつ病に対する治療法であったり、医療サポートについてでしたが、”産後うつ”という特定の場面について、当事者と家族の生の声を聞くことができ、医療従事者の立場からどのような支援を考えていけば良いか、新しい学びを得られたように思います。今回さんかでき本当ら良かったです。
うつの奥様を支えたご主人の言葉が聞けたことは、とても貴重でした。他の皆様の意見も考えさせられることがたくさんでした。これからもこういったセミナーなど、どんどん参加したいと思いました。お話を聞いて、「ああ、わかる」と納得することが、とてもたくさんありました。辛さを抱えて生きる人は、本当にたくさんいるのですね。
会の趣旨からもっと男性が多いものだとおもっていましたが、私ひとりだけで驚きました。でも、実体験をありのままに話していただき、それがそのまま自分の実体験と被り、非常に有意義な会に参加できたと思いました。
今後もこういう会は参加していきたいと思いますので、運営も大変とは思いますが、これからもよろしくお願いいたします。
夫婦で苦労をのりこえているところがすごいと思いました。とても良かったと思う。

≪保育サポート&ボランティア≫
1歳から9歳までの6人のお子様たちが、学習会の間、別室のお部屋で過ごしました。お子様たちもお疲れ様でした。保育サポートは、チャイルドサポート大宮様のご協力をいただきました。




≪プティパからのメッセージ≫

私は、精神科ソーシャルワーカーとして、地域での相談支援に関わって参りました。ご本人やご家族が、医療・保健・福祉、地域の人たちの応援が得られた場合とそうでない場合は、人生の質が全然違ってしまいます。特に、キーパーソンとなる家族の理解のあるなしは、大きな「鍵」となります。
プティパのテーマのひとつ、「療養と子育ての両立支援」をすすめる中で、自助グループ「はくはぐ」の活動を知り、主宰者である藤枝真紀子様に「あんしん子育て’サポートプロジェクト」の共催者になっていただけるようにお願いをさせていただきました。

幸運なことに本プロジェクトは、大和証券福祉財団「平成24年度(第19回)ボランティア活動助成」として採用いただき、学習会開催にはさいたま市の後援をいただくことができました。
さらに、藤枝様には、共催のご協力だけでなく、産後うつを体験された当事者としての講演のお願いもさせていただきました。重ねて、ご主人様には、家族の立場からのお話をすることもお受けいただきました。
まさかご夫婦での対談が実現するとは、想像もできなかったものですから、いろいろな方にお力添えをいただき、「夫の体験」をお話くださる方を探した時期がありました。それぞれの方にさまざまなご事情があるのはもちろんですが、今の日本では、他者の前で病気体験を語るということが、どれほどご負担やリスクが大きなものであるかを学びました。
それだけに、第2回、第5回と藤枝ご夫妻にご登壇いただけたことは、ご夫妻の深い想いの賜物だと思います。

当初9月に企画していた学習会は、台風18号に遭遇してしまいました。定員を越えるお申し込みもいただき、準備万端の中で聞き続けた台風情報。主催者としては、雨風の中でも開催したい気持ちが募り、「中止」の決断はできませんでした。藤枝ご夫妻は、「参加者様の安全第一」と開催延期のご提案をくださって、救われました。
ご夫婦のお話が聞ける安堵感だけではありません、「参加者様の安全第一」と思ってくださるお人柄を知り、このようなお心を持つ方との出会いに改めて感謝を致しました。

また、各回、参加者様にも本当に恵まれた学習会でした。熱心に聞き、発言してくださって、アンケートにはたくさんの感想を書きこんで下さいました。会を重ねるごとに、まるで’同志’のような近しい想いを感じさせていただきました。
「これからも続けて」という声に、今励まされています。まずは、この一年の活動を小さな報告集にまとめさせていただき、皆様から学んだことを共有してくださる方々にお届けしたいと思います。

一年間、プロジェクトに参加くださった皆様、応援を下さった皆様、本当に有難うございました。

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